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Tea, please.

先だって、実にウン年振りに、優雅に茶なぞしばいた。所謂「アフタヌーンティー」と云うヤツだ。

お茶をご一緒したのは、母の中学校のご学友だったご婦人。母曰く、数年前に定年退職なさるまで、ずっと大学の研究室におられた努力家でいらっしゃるそうだ。ご本人に伺ったところ、なんでもずっと英語を本格的になさりたかったそうで、リタイヤなさるやいなや、単身渡英していらっしゃって、以来2年間語学校で頑張っていらっしゃるそうだ。

拍手。立派。素ン晴らしい。応援したくなるぜ。若人でさえ、異国で右も左も分からない中で学校に通うのは大変なのに、ある程度お歳を召してからなさるなんて。あたしゃ、そんな事もうイヤだね。10代後半でイギリスに来て、我武者羅になって、苦汁を飲んで、やっと英語をなんとかした。その次は、イギリスで大学を卒業してから、思うところあって1年程、華の都の筈のお巴里に逃亡したが、実に水が合わなくて、とっととイギリスに帰ってきた。我が人生これまでで、2度異国行きを決行したことになる。もう3度目をやるエネルギーは、多分ないね。それを、私の倍程のお歳の方がなさるなんて、脱帽ものだ。

しかし、ご夫人の単身渡英を容認なさっていらっしゃるご主人も、ご立派の一言に尽きる。ウチの母が、まかり間違ってそんな事を口走ろうものなら、父は、

「俺を飢え死にさせる気か」

と、身振りまで混ぜて、大袈裟に騒ぐだろうね。

ともあれ、或る日、母から電話でそのご婦人の話を聞き、早速お茶でもご一緒しようと思い立ったのはいいが、困った事がひとつあった。ずっと昔から気に入って、アフタヌーンティーを気取るのに使っていた安くておいしいホテルのサロンが、ホテルごと消滅していたのだ。

焦りまくってグーグルしまくって、やっとその名もTea PlaceならぬTea Palaceと云うのを探し出した。結果から言うと、パレスなんて、名ばかりだった。サンドイッチとケーキは悪くなかったけれど、スコーンは、パサパサな上に、ジャムとクリームが何の味もしなかった。2度と行かないだろうし、お勧めする気もさらさらないので、リンクなし。

お茶屋が並でも、ご一緒させて頂く方がよろしければ、優雅な時間は過ごせる。別れてからバスの中で時計を見たら、なんと3時間半も経っていた。

日本にお住まいの方々は本気で、今でもイギリス人は猫も杓子も、毎日アフタヌーンティーを嗜むものだと信じていらっしゃる節がある。が、それは、まったくの迷信である。アフタヌーンティーを振舞ってくれる類のお茶屋は、近年激減した。今やロンドン市内では、常軌を逸して高いホテルか、美術館のカフェにでも行かないと、ありつけない。(それではイギリス人が毎日のように社交の場として使うのは、何処かと云うと、パブだ。ビール片手に、語らうらしい。私は、アルコールをやらないので、異世界だが。)

そもそも最近のイギリス人ときたら、紅茶よりコーヒーを好む。家庭でも外でも、「紅茶」と呼ばれるものは、単にそれらしい色の付いたお湯みたいなもので、ほんとうにおいしいお茶を頂きたかったら、かなり努力をして探す必要がある。

紅茶をポットで淹れて、それをカップで頂くなんて事が、すでにして稀なのだ。コーヒーを飲む時も、大概が例のマグカップってヤツで飲む。

胃が犯される気がしてコーヒーは飲まないので、コーヒーに関しては書けないが、紅茶は、大好きだ。紅茶をマグカップで頂くと、味も素っ気もない。優雅ぢゃ、ない。

イギリス英語で、mugと云うのは、「アホ」程度の意味なのだが、私の持論は、アホが使うからmug cupって云うのだと思う事にしている。

翻って、最近の日本の偉そうな喫茶店で、砂時計と共に紅茶を運んで来て、「こちらのお茶は、3分淹れてからお飲み頂きます。この砂時計が落ちきった時です」なんぞと言われると、ついつい5分ぐらい放っておきたくなる。濃いのが好きなんだい。理科の実験ぢゃ、あるまいし。マグも砂時計も、極端なのは、よくない。

「贅沢は文化を生むんです」と、おっしゃった方がおられる。子供の頃お親しくさせて頂いていた、華族の名家の出でいらっしゃって、或る有名子供服ブランドをお始めになった令夫人だ。この言葉は、大それた事だとお思いになる方もおられようが、真実だね。

贅沢と云うのは、優雅とか風流の事だと思う。ゆったりと静寂を感じたりする、洒落たひとときを過ごせる、「文化の程度」の事だと承知している。あくせくしたり、強迫観念に追い回されない事だ。金に飽かせて流行のブランドを買い漁ったり、似合いもしないライフスタイルを追求するのは、成金趣味で、ほんとうの贅沢ぢゃぁ、ないだろう。なにも高価な調度品(や値段)のサロンで飲むだけが、アフタヌーンティーでは、ない。要は、「雰囲気」があればいい。

テーブルクロスが敷いてある落ち着いたサロンで、ポットで淹れたお茶を何時間も掛けてゆっくりいただきながら過ごす。それは、日本の茶道の茶室が、時のない静寂が感じられるように出来ているのと、同じ理屈だ。スケールは、違うけれど。

生き急いで、なにが楽しい。

 

 

 

 

 

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